高齢者・障害者に役立つ高度技術
High-Technology useful to the Elderly People and the Disabled People

 本原稿は早稲田大学人間総合研究センターの研究員が執筆し、近々刊行される予定の「高度技術と福祉社会」の一部を成すものです。このページをお読みになられてご興味を持たれた方は是非「高度技術と福祉社会」が刊行された折にはご購入頂くようお願い申し上げます。

主な内容

[1] はじめに
[2] 障害を克服する技術の架け橋−コンピューターとインターネット−
   (a) 一人の便利がみんなの便利に、みんなの便利が一人の便利に
   (b) 電子化された情報は味付け自由
   (c) 「てんじょうのせい」って何?
   (d) 触って図を読む
   (e) 電子化されていない情報は文字認識、音声認識や手話認識で
[3] 高齢者・障害者のための一工夫
   (a) 運動機能に起因する問題とその対策
   (b) 知覚機能に起因する問題とその対策
   (c) 認知能力に起因する問題とその対策
[4] 高齢者・障害者のための便利帳
   (a) 福祉用具カタログ「こころウェブ」
   (b) 「電子道案内システム」としてのIT技術の可能性
[5] こんなこともできるはず−高度技術の福祉への応用−
参考文献

[1] はじめに

 コンピューターとインターネットを中心とした近年のIT(Information Technology)技術の進展は、日常生活で移動が困難な高齢者や障害者にとって情報を得るのに非常に便利な道具である。そこで以下では「電子カタログ」および「電子道案内」という観点からその実例を示すと共に、高齢者や障害者がそれらの機器を使えるようにするためのいろいろな対策について述べる。さらにIT技術を利用した「電子健康記録カード」の実現可能性についても述べる。

[2] 障害を克服する技術の架け橋−コンピューターとインターネット−

(a) 一人の便利がみんなの便利に、みんなの便利が一人の便利に

 「必要は発明の母」ということばは使い古されたことばであるが、実に当を得たことばである。これまで人類は数々の不便や困難に遭遇するたびに、それを克服する努力をしてきた。その中には一部の人の「必要」から生まれた福祉用具が他の人たちの「便利」になり、広く一般に使われるようになったものも多い。その代表的な例として、タイプライター、タバコに火を着けるライター、洗浄機能付きトイレがある。視覚障害者にとっては墨字(点字に対して、インクで印刷された文字をいう)を書くことは非常に困難な作業であり、これをボタン操作で実現できないかと考えて発明されたのがタイプライターである。今日タイプライターそのものを使っている人は多くないと思うが、その発展形であるコンピューターのキーボードは日々我々の生活で使われている。一方、二度にわたる世界大戦では多くの人たちが腕を失ったが、マッチでタバコに火を着ける作業は両手でないとできない。そこで考案されたのがライターである。同様に上肢に障害がある人にとって困難な排便後にお尻を拭くという作業を解決するために開発されたのが洗浄機能付きトイレである。
 このように「必要」から生じた「福祉用具」が広く一般向けの「商品」として使われるのと反対に、本来一般向けに開発された「商品」が障害者や高齢者に特にありがたがられている例もある。その代表的な例として、ファクシミリと携帯電話のメール機能がある。ファクシミリは文字も図形も区別せずに画像として送るために開発された静止画伝送装置であるが、これまで「音声を伝送する電話」の恩恵に浴すことができなかった聴覚障害者の大きな助けになった。一方、携帯電話のメール機能は、それまでパソコンで送受していた電子メールをいつも携行可能な携帯電話端末のディスプレイで読めるようにするために開発されたものであるが、メールの送受信がすべて視覚情報だけで行えるため、現在では自宅においても出先においても聴覚障害者の生活必需品になっている。さらに、通常「福祉用具」の分類には入れないが、自動車も下肢障害者にとっては立派な「福祉用具」である。自動車を運転することで初めて学校に行くことが可能になり、生業に就くことが可能になった障害者が、筆者を含め、どれほど多いかは容易に想像できると思う。
 現在は「IT時代」と言われており、それを支えているコンピューターとインターネットも一般用から派生したものであるが、いろいろな意味で行動の制約が多い高齢者や障害者にとっては非常に便利な技術となっているし、これからさらにその度合いが増していくものと考えられる。まずコンピューターがどれほど便利な福祉用具かを簡単に説明しておこう。高齢者は程度の差こそあれ大なり小なり視覚と聴覚と四肢の障害者であると言って良いであろう。社会的な取り組みとして何年か前から新聞の文字を少しずつ大きくしているが、新聞に書かれている文字をすべて老眼鏡の要らない大きさにしてしまったら、新聞の厚さがどれほどになってしまうか想像するだけで恐ろしいことになる。しかしながら、コンピューターにとっては必要に応じて文字を大きく表示することは極めて簡単なことである。
 読者の中にはご自分でパソコンを使っていらっしゃってもご存知ない方が多いと思うが、現在市販されているパソコンのかなりのものには「拡大鏡機能」が出荷時から組み込まれている。この機能はカーソル付近の横長の領域をディスプレイ上端に拡大して表示する機能である。通常パソコンでは文章を横書きにすることが多いため、横長の領域を扱うことで、現在読みたいと思っている一連の文字がディスプレイ上端に大きく表示される。多くのパソコンでは「アクセサリ」の中の「ユーザ補助」のところにあるので、ご自身でお試し頂くと良いと思うが、倍率も任意に変えられ、色の反転やコントラストの調整もできる。ここまで極端な拡大でなくても、編集中の文書の表示倍率を変え、一部分を詳しく見たり、全体のレイアウトを見るということは一般の人でも日常的に行っていることと思う。
 筆者の経験を少し述べると、最近視覚に障害がある人と一緒にパソコンを勉強するようになり、音声読み上げ機能を使い始めてから、取りあえず音声読み上げ機能で概略を掴んでおいて、必要なところ、あるいは誤った読み方で読み上げられたところを文字で視覚的に見直す方が楽であることに気付いたのである。このように音声読み上げ機能もパソコンの大きな利点の一つである。

(b) 電子化された情報は味付け自由

 電子化された情報の最大の利点は、いろいろな表現形式に変換可能であるという点である。先に述べた例では、大きさの違う文字や合成音声にそれぞれ変換した訳だが、さらにピンを上下させて点字を表すピン・ディスプレイを使って点字にすることもできるし、メールとして送ることも極めて容易である。一般にいろいろな表現形式の間での情報の変換を「メディア変換」と呼ぶが、上記の例はメディア変換が視覚や知能に障害がある人を含む、すべての利用者に便利さを提供できることを端的に表している例である。
 視覚障害や聴覚障害がコミュニケーション障害の一例であることは良く知られているが、コミュニケーション障害の極端な例として、聞くことも見ることもできない盲ろう者が日本だけでも約二万人いるということは意外に知られていないのではないだろうか。盲ろう者の場合、これまで通訳者が左右の人差し指、中指、薬指をそれぞれ盲ろう者の人差し指、中指、薬指に重ねて点字コードを伝える指文字しかなかったが、ピン・ディスプレイを使うことによって、いつでも好きなときにコンピューター上の電子化された情報、すなわち、インターネット上の好きなホームページや文書ファイルの情報を読むことができるようになった。盲ろう者の福島智氏が東大の助教授になった話は有名だが、これもコンピューターによるメディア変換の大きな贈り物と言って良かろう。
 ただ、メディア変換は知的処理であり、どうしても誤りが含まれることを忘れてはならない。漢字仮名混じり文で書かれた文章を点字や合成音声に変換する場合、読みを決める処理が必要であり、読み方が間違っていると内容が正しく理解されないことがある。例えば「人気のない部屋」は文脈によって「ひとけのないへや」と読むことが自然だったり、「にんきのないへや」と読むことが自然だったりするが、これをメディア変換の過程でコンピューターが正しく判断して、読み分けることは現在の技術では不可能である。読みが誤った場合、誤りの内容を分析して正しい読みを類推し正しい意味を理解することは大変難しい作業である。中途失明者の場合、多くは漢字を学んだことがあるので、読み誤りがなぜ起こったのかをある程度推測することができるかも知れないが、漢字自体を学習していない先天性の視覚障害者の場合、それぞれのケースでなぜそのような読み誤りが起こるのかを理解することが極めて困難となる。

(c) 「てんじょうのせい」って何?

 この意味から、漢字仮名混じり文の読みを決めるプログラムなど、社会的なニーズが高いソフトウェアについては一企業が整備し、その権利を個別に持つより、企業間でコンソーシアムを形成し、相互に共通化を図り、完成度を高める必要がある。先に視覚障害者と共にパソコンを利用しているという筆者の経験を紹介したが、その際、漢字を特定するための確認メッセージの内容にソフトウェア会社間で大きな格差があり、利用者に重大な障壁になっていることに驚かされた。そのようなソフトウェア毎の性能の差を示す事例を、インターネット用音声読み上げ機能付きブラウザーを例にして紹介する。
 インターネット用ブラウザーの場合、ホームページに書かれている一連の文章を連続的に読み上げる以外に、キーワードを入力して関連記事を検索するいわゆる「検索機能」が多用されていることは周知の通りであるが、その際に漢字入力が必要となる。筆者と一緒にパソコンを使っている視覚障害者が「おおい」と入力した際に「てんじょうのせい」と読まれる漢字が候補単語に含まれたことがある。読者の皆様はこれが何の字か想像が付くであろうか。実は「大井」の「井」の字の読みとしてこれが使われたのである。筆者が想像するに「天井の井」という確認メッセージを読み上げたものが読みの自動付与により「てんじょうのせい」と読まれたものと思われる。その視覚障害者の希望の漢字は「大井」であったから本来なら正しい漢字が選ばれたことになるが、この確認メッセージのおかげで違うと思い、他に適当な候補がなく、大いに困ったそうだ。
 昔から電信の世界では「朝日のア」、「いろはのイ」といった仮名文字の確認メッセージが統一化されており、視覚障害者用の漢字確認メッセージはこれの漢字版に当たるものである。このような重要性の高いソフトウェアは各社で共通化し、利用者が他のソフトウェアを使っても困らないようにすることが必要であり、日本工業規格などで統一基準を示すべきものだと思うが、この辺りの対応はまだまだ遅れていると言わざるを得ない。

(d) 触って図を読む

 以上では主にテキストのメディア変換の問題を述べたが、インターネット化に伴って画面構成はもちろんのこと、図・写真の内容を視覚障害者にどう伝えるかが大きな問題となっている。パソコン通信が中心であった時代には大部分の情報は文字で伝えられ、一次元的であったため、文字列を順次音声合成していけば良かったが、インターネット時代を迎えて、画面構成が二次元化し、複雑なGUI(グラフィック・ユーザー・インターフェース)が使われているために、画面構成がどうなっているかを伝えること自体が大きな技術的課題となってきている。GUIの問題以外にも、これまで文章で説明されてきたことが図や写真で視覚的に伝えられることが多い。インターネット上の図や写真については「代替テキスト」を付け、図や写真を説明することが望ましいとされているが、「○○の説明図」といった図や写真の位置付けが分かる程度の代替テキストが多いため、仮に代替テキストを合成音声で読み上げたとしても図や写真の内容を知ることができる訳ではない。この意味から点字プリンターや触覚ディスプレイを低価格で視覚障害者に提供しない限り、今後いわゆる「デジタル・デバイド」は本質的には解決しないのである。
 念のため、ここで点字プリンターとピン・ディスプレイ、触覚ディスプレイについて簡単に説明しておく。点字プリンターはハンマーで紙に突起を作る機能を持っていて、縦3行横2列の突起の有無で「点字」を打てる他、一部の機種は突起で図を表現する「点図」作成機能を持っている。点字プリンターが紙に記録を残す装置であるのに対して、ピン・ディスプレイと触覚ディスプレイは瞬時瞬時の情報を伝えるものである。ピン・ディスプレイは先にも述べた通り点字を表現するものであり、触角ディスプレイは凹凸や振動で色の濃淡を表現し、図や写真の内容を伝達するものである。点字プリンターも触覚ディスプレイも価格的にはかなり高価であり、視覚障害者の家庭に普及するところまではいっていない。視覚障害者が地図を見ようとする場合、凹凸で位置関係を表した「触地図」が必要になるが、点字プリンターが極めて高価であるため、触地図がある場所は極めて限られている。これらの機器の低価格化が図られ、視覚障害者の家庭にも世界地図や都道府県・市町村の地図、果ては町内の地図までもが触地図で簡単に配布できるようになれば視覚障害者にとって知識の幅が格段に広がり、自立が促進されるものと考えられる。

(e) 電子化されていない情報は文字認識、音声認識や手話認識で

 本項では(b)で述べた「電子化された情報のメディア変換」より一歩進んで、視覚や聴覚などのアナログ的な情報を他の表現形式に変換する「感覚代行」について述べる。電子化されていない情報のメディア変換で一番精度が高く、広く実用に供されているのは文字認識である。視覚障害者が一般の書籍をOCR(Optical Character Recognition, 文字認識)装置を使って読むことで視覚障害者の知識源が格段に広がったことは特筆すべきことである。現在印刷文字に対する認識精度は極めて高く、一般の視覚障害者でも安心して使えるところまできている。さらにコンピューターを使って音声認識や手話認識ができたら、どれほど便利だろうと思う人も多いと思う。印刷文字は一文字一文字分かれているので、比較的パターン認識がしやすいのに対して、音声や手の動きは連続していて、技術的には数段難しくなってしまう。
 音声認識は現在かなり一般化していて認識精度も飛躍的に向上している。ソフトウェアも1万円以下で購入することができ、通常の文章なら90パーセント以上の認識率が得られ、かなり習熟した人がキーボードで入力するのと同等の入力速度が簡単に実現できる。従って、キーボードが苦手な人がキーボード代わりに利用するには十分な性能が得られていると思って良い。ただ、現在の音声入力は口元のマイクロフォンから行われているためにこのような性能が実現されているのであって、話す人が遠くにいたり、回りに雑音があったりした場合、十分な認識性能は得られない。また、音声入力ワープロは「書き言葉」を中心にしているために、砕けた表現が多い「話し言葉」を正確に認識することが困難である。読者の多くは「聴覚障害者の耳」となってくれることを期待していると思うが、それにはまだしばらく時間が必要である。
 音声認識が「聴覚障害者の耳」であるのに対して手話認識は「聴覚障害者の口」となり得る研究である。手話認識の研究は独立行政法人通信総合研究所や一部の企業で行われており、限られた語彙についてはそれなり使えるレベルになりつつあるが、手話を使った意思伝達においては顔の表情の寄与も大きいことが知られており、本当の意味で正しい意味を伝えられるシステムが実現するにはまだ多くの研究が必要である。

[3] 高齢者・障害者のための一工夫

 核家族化と都市化が進んで、都会のオフィス街では高齢者を見る機会が極端に少ないので、第一線の人たちであればある程忘れがちだと思うが、高齢者の多くは軽度の視覚・聴覚・肢体障害者であり、現在第一線で活躍している人もいずれはこの問題に直面する。すべての人たちが自分たちの問題として当事者意識を持って対処しなければいけない問題のはずであるが、自分だけは大丈夫と考える人たちが多く、対策が十分に行われていないのが現状である。高齢者や障害者の問題を扱う場合、大きく分けて運動機能の問題、知覚機能の問題、認知の問題の三つを考える必要がある。

(a) 運動機能に起因する問題とその対策

 運動機能に起因する問題といっても極めて幅が広いので、以下では、高齢者を含む軽度の障害の場合と、残存運動能力が極めて限られている重度の障害の場合に分けて述べる。
 高齢者を含む軽度の障害の場合、クリックとダブルクリックの使い分けが困難であったり、ドラッグが困難であったり、思った通りのキーを押すのが困難だったりするケースが多い。現在市販されているパソコンの場合、クリックとダブルクリックの境界線(閾値)を表す時間間隔を調節する機能が付いていて利用者の特性に合わせることができる他、マウスを使わずにキー操作だけでいろいろなことができる「代替操作」も設定されている。普段マウスが使える人でも、キーによる代替操作を知っておくと、人前で講演しているときのようにマウスが使いにくい環境になったときに、便利である。講演等を行う場合、最近ではパワーポイント(正確には、Microsoft PowerPoint)を使うことが多いと思うが、スライドの内容を画面いっぱいに表示する「スライドショー」に切り替えるため、やりにくそうにマウスでプルダウンメニューを開いたり、スライドショーのアイコンをクリックしたりするのを良く見かける。しかし、スライドショーへの切替は「Alt+V, W」で可能だし、スライドショーの終了は「右クリック, S」で可能である。また、ウィンドウを閉じるときもいちいち右上端のXマークをクリックするより、「Alt+F4」を入力した方が速い。代替操作は決して障害者だけの便利ではなく、すべての「にわか障害者」にも大きな助けとなるのである。
 運動機能に関して言えば、不随意運動によって思った通りのキーが押せないケースがある。この場合はそれぞれのキーに対応した穴の開いたキーボード・カバーがあり、そこに指を押し込む形でキー操作をすることにより、その影響を除去することができる。
 さらに重度の運動障害があり、体の動かせる部位が極めて限られている障害者のために、ワン・スイッチ・キーボードやワン・スイッチ環境制御機器がある。前者はコンピューター用の文字入力装置であり、後者はテレビ、電話、電灯などの家庭電化製品の制御を行う装置であるが、基本的な制御方法は同じなので、ここではワン・スイッチ・キーボードを例にその制御方法を簡単に述べる。まず、画面上でア行、カ行、‥‥というように各行が順にゆっくりとフォーカスされていく。あるタイミングでスイッチを押すと特定の行が選ばれ、今度はその行の中でア段、イ段、‥‥というように順に各段の文字がフォーカスされていく。このようにして、ある文字を入力する。環境制御機器の場合、行の選択が電気製品の選択に変わると考えてもらえば良い。
 ワン・スイッチ機器の場合、瞬きや呼吸をスイッチ入力として使う場合もある。先にコンピューターの出力形態の多様性について述べたが、同様に入力形態についても極めて多様性に富んでおり、これがコンピューターの最大の利点なのである。

(b) 知覚機能に起因する問題とその対策

 加齢による目の焦点調節機能の衰え、すなわち老眼については良く知られているが、これ以外にも加齢に伴う視力の減退はいろいろな症状を呈する。その一つが輝度差識別能力の低下である。輝度差識別能力の低下が顕著に分かるのは例えば白い紙を二つ折りにした場合の両端のずれ方である。筆者自身、若い頃は紙の端がはっきり見えたので、一ミリメートルでもずれていると、二つ折りにした人がずぼらな性格なのだろうと思ったものであるが、年を取るに従って、紙の端がはっきり見えないことを実感してきた。同様の現象は色付きの紙に印刷された文字の判読や、液晶ディスプレイに表示された文字の判読の場合にも起こる。
 このような現象をより体系的に捉えるために最近高齢者の視覚能力と同等の補正処理を行うソフトウェア(例えば、(株)トヨタマックス社製視認性評価システムHuViS)が市販されている(参考文献(1))。このソフトウェアには細かな文字がぼける処理と、輝度の差を減らし、明暗が識別しにくくする処理が行われており、高齢者にはどのように見えているかがシミュレーションできる。このような輝度差識別機能の低下を考慮した例として、NTTドコモから発売されている「らくらくホンU(正確にはF671i)」では文字の大きさを大きくしただけでなく、背景色を完全な白にしてコントラストを確保しており、これが文字の読みやすさに大きく貢献している。
 以上述べた問題は、画像の静的特性を考慮した高齢者の視覚能力のシミュレーションであるが、さらに一歩進めて考えると、高齢者の場合、環境への順応速度が低下しているという大きな問題がある。これはいわば画像の動的特性の違いを考えるものである。環境への適応が必要とされるものは大きく分けて焦点距離と虹彩の開き具合であり、後者は通常「明暗順応」と呼ばれるものである。これまでは主にコンピューターの話をしてきたので、そこからは少しずれることになるが、高齢者が自動車を運転する場合のことを考えよう。運転中、通常は遠くを見ているが、一旦スピード・メーターに目を落とし再度遠くを見る必要が生ずる。手元のスピード・メーターに焦点が合うまでの時間は若年者に比べると長くなり、また遠くに焦点を合わせるまでの時間も長くなる。この間の時間はいわば前を見ていない「空白の時間」になってしまう。先の高齢者の視覚のシミュレーション・ソフトにおける補正は静止画像を対象に考えているので、補正の特性を時間と共に変化させることまではしていないが、コンピューターを使ってこのようなシミュレーションを行うことも原理的には可能である。予め異なる距離間での焦点調節の時間を計測しておくことにより、前方と手元の間の視線移動での空白時間をシミュレーションすることができるはずである。
 なお、視線移動を最小限に抑えようという考え方から、フロントウインドー中央部下端にメーター類を置いた「センター・メーター」を採用する車が最近急激に増えているが、運転者からスピード・メーターまでの距離が伸び、高齢者の焦点距離調節時間を短くするためにも有効であり、大変喜ばしいことである。
 コンピューターのシミュレーション・ソフトではあらゆる要因を自由に制御できるから、同様に明暗順応のスピードを予め計測しておけば、トンネルに入った直後にトンネル内の景色が高齢運転者にどう見えているのかもコンピューター・シミュレーションで調べることができるはずである。話を本筋に戻すが、このように高齢者の知覚特性の疑似体験の道具としてもコンピューターは大きな力を発揮している。

(c) 認知能力に起因する問題とその対策

 認知に関する問題はまだあまり手が着けられていない問題であるが、極めて重要であり、かつ多種多様なアプローチが必要な分野である。多種多様なアプローチと言ったのは、「戦前の教育しか受けていないのでアルファベットの大文字と小文字を合わせた52文字が識別できない」という問題から始まって、「キーボードにいくつも文字が書かれているがどのモードにしたときにどの文字が入力されるのか分からない」という問題、さらには「『ファイル』、『フォルダ』、『フォント』、『段組』などの言葉の意味が分からない」という問題、さらには「『ファイルを保存する』という行為の意味が分からない」という問題など、対象としなければならない問題があまりに多岐にわたるためである。
 特に最近の機器は電話にしてもファクシミリにしてもVTR(ビデオ・テープ・レコーダー)にしても、増してやパソコンでは、どういう機能があるかその全容を掴むことさえ困難なのである。そういう観点からみると現在市販されている機器の取扱説明書の書き方には大きな反省が必要だと思うが、これを言い始めると収拾が着かなくなるので、ここでは最近筆者が出願した特許(参考文献(2))を例にこんな工夫をすると誰にでも分かりやすく機器が操作できるのではないかという提言を行う。
 コンピューターのキーボードのそれぞれのキーには最大四文字の表示がしてあり、シフトキーが押されているかどうかや、英数モードか仮名モードかによって入力される文字が変わる。同様の例として、携帯電話の「2」のボタンを考えると、数字モードなら「2」であるが、漢字および仮名モードのときは押す回数によって「か」(または「カ」)→「き」(キ)→「く」(ク)→「け」(ケ)→「こ」(コ)→「か」(カ)と変化し、英字モードなら「A」→「B」→「C」→「A」のように変化する。慣れている人なら、それぞれのモードでそれぞれのキーやボタンが何を意味するかがすぐに分かるだろうが、不慣れであったり、高齢であったりした場合、このような複雑な入力切替を理解するのはかなり難しいように思う。
 そこで、それぞれのモードやボタンを押した回数に応じて、キーやボタンの上面や近くに「入力される文字」の内容を表示してはどうであろうか?このようにすればモード切替の難解さがかなり軽減するのではないだろうか?このような考え方を家庭電化製品のリモート・コントローラーに応用したらどうなるだろうか?現在、テレビ、VTR、エアコン等々と別々にあるリモート・コントローラーが一つにまとまり、「テレビ」を指定したときにはボタン面に「チャンネル△」、「チャンネル▽」、「音量△」、「音量▽」などが表示され、「エアコン」を指定したときには「冷房」、「暖房」、「温度△」、「温度▽」などが表示される。一つだけ「マイ・リモコン」を持っていればすべての機器に対応できるようにならないだろうか?さらに銀行や郵便局の預貯金自動預払機のボタンの近くに貼ってある点字シールもピン・ディスプレイにしてしまったらどうだろうか?画面に表示される内容が次々に変化してもその都度ピン・ディスプレイの内容が追随して変化するので、画面毎の状況に応じたキー操作の意味が理解できるのではないだろうか?
 自分たちが日頃使っているいろいろな機器のことを考えてみると、機器があまりに高機能化して一つのボタンに一つだけの意味を与えることができなくなっている。結果として取扱説明書が手元にないとそれぞれの状況でそれぞれのボタンが何を意味するのかが分からなくなっているが、こんな工夫で利用者の理解しやすさが大幅に改善されるのではないだろうか?真剣に「使いやすさ」、「分かりやすさ」を追求すれば、できることはまだまだあるように思う。

[4] 高齢者・障害者のための便利帳

 コンピューターとインターネットは高齢者や障害者のいろいろなニーズを自宅にいながらにして満たしてくれる可能性を持っている。ここでは電子カタログとしての「こころウェブ」の紹介と、道案内システムとしてのIT技術の可能性について述べることにする。

(a) 福祉用具カタログ「こころウェブ」

 近年インターネットを使った「ネット・ショッピング」が盛んに行われているが、少量多品種の最たる例であり、しかも利用者の多くが移動困難者である「福祉用具」は、ネット・ショッピングに最も適した商品だと考えられる。この点にいち早く着目して福祉用具の情報をインターネット上でまとめたのが「こころウェブ」(参考文献(3))である。こころウェブは1995年にIBMのSNSセンター(本当は「スペシャル・ニーズ・システム・センター」の略であるが、同時の責任者であった関根千佳様(現、(株)ユーディット代表取締役社長)は「障害者なんでも相談センター」の略じゃないかと良く言われていると、笑っておっしゃられたのが印象的である。)が開設したものであるが、現在はJEIDA(社)電子情報技術産業協会が管理している。こころウェブには生活全般にわたっていろいろな福祉用具の情報が載っているので、是非一度覗かれることをお勧めする。
 ただ、こころウェブも時代に合わせた改修が必要な時期に来ている。というのはこころウェブは福祉用具を写真で紹介することに主眼が置かれているが、ここ数年のインターネットのブロードバンド化により、ホームページ上でビデオを紹介することが極めて容易になってきた。こころウェブで紹介されるような福祉用具は日常生活で見かけることの少ないものが多いので、使い方自体も想像が付きにくいことがある。このため、該当する福祉用具の使用中のビデオ画像をホームページに載せておくことが極めて有益なのである。こころウェブのブロードバンド対応を期待したいものである。
 さて、福祉用具を「商品」という観点から見た場合、「商品紹介」と並んで重要なのが「利用者意見のフィードバック」であり、インターネットはこの意味でも大いに期待できる。筆者の経験から言うと、通常の商品なら取扱説明書に必ず書かれている製造元の情報が、福祉用具の場合には利用者に知らされないことが多い。このため利用者は製造元に意見を言いたくても、その方法がない。福祉用具に製造元の情報が添えられていないことにはいろいろな理由がある。福祉用具の多くが行政からの「支給」という形をとっているために、利用者側に選択の余地がなく、製造元の情報を添えても仕方がないという面もある。また、福祉用具の中でも義肢・装具の類は、間にいわゆる「義肢屋さん」が介在し、利用者からは義肢屋さんしか見えないという事情もある。このようないろいろな理由が複合した結果、福祉用具の製造元には利用者からのフィードバックがほとんど伝わらないため、利用者のニーズからかけ離れた製品が平気で売られている。
 筆者は歩くときに杖を使っているので、杖のゴムを例に取り上げるが、F社の製品とK社の製品では持ちが十倍違う(参考文献(4))。F社の製品は必要なところ、すなわち接地面だけのゴム厚を厚くし、先端に不要な凹凸をなくしているのに対して、K社の製品は肝心な先端部のかなりの厚みが凹凸に費やされている。K社では凹凸が滑り止めとして有効に機能すると考えているのだろうが、凹凸部は数日間で磨耗してしまい実効的な意味を持っていない。このように製造側の思い込みで製品の形状が決定されているが、これに対して意見を述べる方法がほとんどないのである。限られた福祉予算の中でより良い福祉を提供していかなければならないという昨今の状況を考えると、今後利用者すなわち高齢者や障害者が賢く自分に合った福祉用具を選択すると共に、利用者の有益な意見を製造者にフィードバックするために、インターネットは欠かせない道具となることは間違いない。
 以上は「福祉用具」の問題について述べたが、同様に患者数が少ない病気や、比較的最近明らかになった病気についての情報はなかなか患者の手元に届いていない。このような場合にも病気に関する最新の知識を、インターネットを通じて患者の手元にいち早く届けることが可能なはずである。

(b) 「電子道案内システム」としてのIT技術の可能性

 電波や赤外線を使って視覚障害者に現在位置や目標物の方向を知らせる「道案内システム」が各地でいろいろな形で利用され始めている。これらの道案内システムの中には、比較的弱い電波を出している発信機のそばに行くと受信機から音声ガイダンスが聞こえてくる指向性のないシステムと、赤外線を発信している送信機に受信機を向けると音声ガイドが聞こえる指向性のあるシステムがある(参考文献(5))。前者は指向性がないため、どの方向に目標物があるかを正確に示すことはできないが、受信機を持っていれば自動的に音声ガイダンスが聞こえてくるため、利用者自身が常に受信機の方向を気にする必要はない。これに対して、後者は指向性があるため、自分で受信機を発信機に向けなければ音声ガイダンスが聞こえてこないが、目標物の方向が正確に分かるので、トイレの入り口などを正確に示すことができ、その方向をたどって行けば自然にトイレにたどり着ける。さらに、トイレの中では発信機に対して何度の方向に何があるか、例えば「9時の方向に洗面台があります。」などを具体的な方向を示すことができるため、より正確な設備の案内が可能になる。
 「道案内システム」には視覚障害者用に現場で現在位置や目標物を案内するシステム以外に、出かける前にどの駅でどう乗り換えれば目的の駅までエレベーターやエスカレーターをうまく使ってスムーズに到着できるかを案内するシステムもある。高齢者や下肢障害者の場合、階段の昇り降りができなかったり、エスカレーターが使えなかったりと、普通の人には想像できにくい移動の障害が数多くある。このため、同一ホームでの乗り換えやエレベーター設置駅での乗り換えを優先的に案内する情報システムがあれば、移動が困難な人たちには大変便利な「道案内システム」になるものと考えられる。
 このような観点から筆者は旧郵政省の研究開発助成金を受けて「高齢者・障害者用鉄道最適経路案内システム」を試作した。筆者が属していた研究室が音声認識の研究室であったため、バリアフリーな音声認識技術を使って、音声と画像の両方の情報を使って、高齢者や障害者でも移動が楽な首都圏の鉄道の乗り換え経路を案内するシステムを試作したのである(参考文献(6))。利用者は階段の昇り降りが可能か、1分間に何段くらい昇り降りできるのか、平らなところは歩けるか、そのスピードは1分間に何メートルくらいか、エスカレーターは使えるかなどの質問項目に従って、身体的条件を情報案内システムに知らせ、システムはそれらの個人情報に基づいて、最適な経路を案内するのである。
 ここでシステムが案内する経路の例を一つ示そう。ただし、首都圏の場合一部併走区間のある鉄道路線が多く、全駅を乗換候補駅として用いると経路数が膨大になり、理解の妨げになるため、図1に示した簡単化した鉄道網に基づいて大宮から新大久保に至る経路を示す。この経路の場合、埼京線を用いて池袋まで行き、山手線の内回りで新大久保まで行くのが通例であるが、
・埼京線が恵比寿まで延長開業し、恵比寿駅にエレベーターが設置されていること、
・田端駅や東京駅では京浜東北線と山手線が同一ホームを利用していること
の2点を知った上で以下の例を見て頂きたい。このシステムでは乗り換え回数を最小化しながら経路数を求めるが、この例で最少乗り換え回数1回の乗り換え経路は12種類求められる。そのそれぞれについて総移動時間を計算してみると表1のようになる。

図1.簡略化した鉄道網の例

表1 大宮駅から新大久保駅に至る乗り換え経路
順位 経 路 所要時間(分)
1 大宮- (埼京線)→恵比寿- (山手線外回り)→新大久保 114
2 大宮- (京浜東北線)→東京- (山手線外回り)→新大久保 123
3 大宮- (京浜東北線)→田端- (山手線外回り)→新大久保 126
4 大宮- (埼京線)→池袋- (山手線内回り)→新大久保 131
5 大宮- (埼京線)→新宿- (山手線外回り)→新大久保 133
6 大宮- (京浜東北線)→田端- (山手線内回り)→新大久保 136
7 大宮- (埼京線)→恵比寿- (山手線内回り)→新大久保 154
8 大宮- (京浜東北線)→品川- (山手線外回り)→新大久保 157
9 大宮- (京浜東北線)→東京- (山手線内回り)→新大久保 161
10 大宮- (京浜東北線)→品川- (山手線内回り)→新大久保 177
11 大宮- (埼京線)→池袋- (山手線外回り)→新大久保 181
12 大宮- (埼京線)→新宿- (山手線内回り)→新大久保 191

 まず注目して頂きたいのは通常の池袋乗り換えが4位になっていることである。先にも述べた通り恵比寿駅にエレベーターが設置されたため、いったん池袋・新宿などの各駅を通り過ぎて恵比寿まで行き、山手線の外回りで新大久保まで戻る経路が最も早いことが分かる。2位、3位は京浜東北線から山手線外回りへの同一ホームでの乗り換えである。
 筆者が試作したシステムは元々携帯電話の音声と画像が同時に提供できる「次世代携帯電話」を前提にしたシステムであり、現段階では一般の人に利用して頂くことはできないが、交通エコロジー・モビリティ財団がインターネット上で提供している「らくらくおでかけネット」(参考文献(7))は考え方として筆者が開発したかったシステムに極めて近いもので、かつ全国規模で情報収集をされていて、皆様が直接お使いになれるので、是非一度お試し頂きたい。
 ここで紹介したシステムは単に最適乗換駅を案内するだけであったが、駅構内での移動経路を具体的に示したり、さらにはバーチャルリアリティを使って、どういう目印のところでどちらに曲がれば良いかなども、臨場感のある動画像で案内することが近い将来可能になるものと考えられ、今後さらなる発展が期待される。

[5] こんなこともできるはず−高度技術の福祉への応用−

 以上では、コンピューターとインターネットで何ができるかを中心に述べてきたが、IT技術はコンピューターやインターネットと離れたところでもいろいろな応用の可能性を持っている。これまで福祉工学の分野はどちらかと言えば、機械工学や建築学の分野の研究課題が中心であった。いわば、これまでの福祉工学が「第2次産業的」であったのに対して、IT技術を利用した福祉工学は「第3次産業的福祉工学」ということができよう。今日IT技術の進展に伴って、福祉分野に応用できる「技術の種」があちこちに転がっている。それらの技術の種を組み合わせてシステムとして組み上げていくことで、高齢者や障害者に大きな利便をもたらすものがいろいろと考えられる。ここではICカード技術の福祉への応用を例にその可能性について述べる。
 現在道路交通の分野ではITS(Intelligent Transport(ation) Systems, 高度交通システム)が大変注目されており、その中の一サービスであるETC(Electronic Toll Collection, 自動料金収受)と呼ばれる、車を止めなくても料金支払いができるシステムが、各地の高速道路に導入され始めている。一方振り返って障害者用の駐車場の現状を見れば、現在でも赤いコーン(円錐状の障害物)などが置かれている。使用時には移動が困難な障害者がそのコーンを動かさなければ障害者用の駐車場が利用できないという矛盾が起こっている。制度上の問題さえ解決すれば、すぐにでもすべての障害者用駐車場に電子的に反応するバーを設け、障害者が車から降りなくても利用でき、しかも一般の心無い運転者の車を締め出すこともできるのである。ただ、このような場合、常に問題になるのが、「身体障害者用車両と言ってもいつも身体障害者が運転しているとは限らない」という問題で、ETCの導入に当たっても、身体障害者の有料道路利用料金割引制度との兼ね合いで、障害者用車両への対応が遅れた経緯がある。
 そこで提案したいのがICカード化された「電子身体障害者手帳」である。ICカード化された「電子身体障害者手帳」を読み取り機に近付けるとバーが自動的に開く、あるいは身体障害者用車両に「電子身体障害者手帳」を差し込んだときだけ、障害者専用の電波を出し、バーが開くなどとすれば制度上も技術的にもほとんど問題はないはずである。
 身体障害者手帳をICカード化することには他にもいろいろな利点がある。まず、「電子身体障害者手帳」は電車の「優先席」など、いろいろなところで利用できる。「電子身体障害者手帳」を差し込まないと優先席の椅子が下りてこないようにすれば、対象者とそれ以外がすぐに分かる。内臓疾患などの身体障害者が優先席を利用する場合、見かけ上、普通の人と見分けが付かないため、一般の人から白い目で見られ、肩身の狭い思いをしているのではないかと想像する。しかし、「電子身体障害者手帳」があれば誰にはばかることもなく、堂々と優先席を利用することができる。
 健康や障害の状態のICカード化は何も障害者だけに止める必要はない。これを一般の人に拡張すれば「電子健康手帳」あるいは「健康記録カード」になる。普通の人でも「自分の健康に関するデータが1枚のカードに記憶されていて、初めての病院に行ってもすぐに行き付けの病院のように自分のことが分かったらどんなに便利だろう」と思ったことはないだろうか?現状では、個人の医療情報は病院毎に管理しているため、新しい病院にかかるときにはX線写真など全てのデータが取り直しになる。また、本人でも過去の病歴の記憶があいまいになってしまったり、突然旅先で倒れたような場合には病歴の説明すらできないこともあるはずである。さらに、複数の病気で複数の科や病院にかかる場合も多いと思うが、薬の複合投与は思わぬ事故を招くから、病歴、投薬歴を一元的に管理することには大きなメリットがある。以上のような理由から国民全てに「電子健康手帳」あるいは「健康記録カード」といったICカードを配布し、障害者はそれに障害のデータも記憶させて「電子身体障害者手帳」にしたらどうであろうか?高齢社会の到来に向けて、できることをどんどん実現していかなければ間に合わない時期に来ているのではないだろうか?

参考文献

(1) ホームページ: http://www.toyotamacs.co.jp/products/catalog15/HuViS.html.
(2) 樋口 宜男 : 複数の入力機能を有する押下ボタンを備えた入力装置, 特許願, 特願2002-025402(平成14.2.1).
(3) ホームページ: http://www.kokoroweb.org/index.html.
(4) 樋口 宜男 : 福祉機器および公共設備の定量的評価と情報公開U福祉の質的充実のためにU, リハビリテーション工学カンファレンス講演論文集, pp. 145-150 (1999-8).
(5) ホームページ: http://www.mind.ne.jp/mpc/ts/index.html.
(6) 樋口 宜男 : 高齢者・障害者用鉄道最適経路案内システム, リハビリテーション工学カンファレンス講演論文集, pp. 153-156 (2001-8).
(7) ホームページ: http://www.ecomo-rakuraku.jp/rakuraku/index/.

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